トランプ氏は、グローバル化の問題点を理解していない

1月20日にトランプ氏の大統領就任式があります。選挙期間中はイスラム系の人々の入国を禁じるとかメキシコとの国境にメキシコの負担で壁を作らせるとか排他的な言動を繰り返してきました。選挙に通ってからは少しトーンダウンしたかと思いきや、またぞろフォードの海外投資やトヨタのメキシコへの投資を批判し高い関税をかけるといいはじめ、おまけに自分に都合の悪いメディアに対して攻撃するだけで質問の機会さえ与えないという態度で暴れ始めています。

確かに、産業の空洞化は多くの先進国で大きな問題です。製造業が賃金の安い海外へ移転してしまい、自国の雇用が減っていくのです。一方で、海外で生産された製品はコストが低いので廉価となり、逆輸入された製品は安くなります。さらに、海外での雇用はその国で購買力が高まり先進国から見て魅力的な市場となっていく、というメリットもあるわけです。

企業がグローバル化した場合、それで得する人とそうでない人がいることは確かです。世界を股にかけて動くビジネスマンや、購買力旺盛な富裕層はグローバル化を享受できます。一方で、安いサービスや商品が入ってくるのはいいが、自分の雇用がなくなれば元も子もなくマイナス面の方がはるかに大きい、というものです。

しかし、ここで考えなければならないのは、製造業で働く人たちだけが労働者ではないということです。グローバル化を弱めたら国内の自動車価格が上がってしまい、例えば自動車産業では全体の需要が減ってしまいます。生産現場で働く人はいいですが、ディーラーさんをはじめその周辺で雇用されている人達は車が売れず苦労します。さらには車輌物流にかかわる人たちはコスト高になり仕事が細ります。自動車の製造自体も減ってきて、自動車会社も苦しくなるでしょう。これらの長短を比較すればグローバル化の方が大きなプラスがあるからこれまで世界の貿易は活発になってきたわけです。トランプ氏の政策はきっと大きな経済的問題を引き起こすでしょう。

アメリカの問題点は、こういったグローバル化によるマイナス面を放ったらかしに、つまりグローバル化によりもたらされた格差を放置していることなのです。グローバル化のメリットは大きい。では、やるべきことは何か?それは雇用に対するセーフティーネットをしっかりと張り、そして働く人たちが環境変化に対応して、新たなより付加価値の高いスキルを付けていくのを手助けすることだと思います。

まさしく人への投資です。職業訓練など人材に投資してこそ労働者もより高い付加価値の仕事をして、給料も増えるわけです。セーフティーネットをしっかり張らず、人にも投資せず、格差を放置していることが問題なのです。今、トランプ氏がやろうとしているのは問題点をすり替えて保護貿易という無茶苦茶な手を打とうとしていることなのです。

村上のりあつ【衆議院】大阪府第1区総支部長
大阪生まれ、大阪育ち。 同志社大学卒業後は主に東京で仕事をし、アメリカのイェール大学では経営学を学びました。 コンサルティング会社、グローバル企業であるロイター通信やフォード自動車等では人事の責任者として経験を積み、長年ビジネススクールの講師も務めております。 グローバルと日本の両方の経験を、是非とも大阪の皆さんとともに国政に活かしたい、その思いでいっぱいです。

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