日本企業の生産性向上には、働くということの文化面が変わることも必要

今日は金融機関も仕事納めでした。一方で、年末年始もお仕事の方は多くおられると思います。健康には気を付けてください。電通の事件が今年大きく取り上げられました。この事件は長時間労働に絡み強烈なパワハラがあったらしく、痛ましい事件で本当に心が痛みます。政治的には労働の監督面をもっと強化しなければなりません。そもそもどうして日本企業はそんな長時間労働が恒常化するのでしょうか?日本企業社会の生産性について考えてみたいと思います。

この単位労働時間当たりのGDP(国内総生産)比較グラフをみると唖然としますね。この数値は、購買力平価といって、単純に為替の影響を受けないように調整したものですので、生活実感に近いものがあるのです。なんでこんなことが起こるのか?私は根本ところに、日本的な過剰品質賛美と効率化軽視の文化、そして日本人の滅私奉公的な真面目さがあると思います。

過剰品質とは、例えば、顧客が電話して来たら留守番電話では失礼だ、といったものです。私のビジネスマン時代の経験ですが、19時頃に取引先に電話したら担当の課長さん不在で、なんとその上司の部長さんが電話に出られて「あ~、村上部長、いつもお世話になっております…」とくるわけです。私はしばらく先方の部長さんと世間話をし、またプロジェクトの進行状況を説明もしながら、最後に「○○課長に、先日の◇◇の件の返答は月曜でなく火曜になる、とお伝えください」といって電話を切るわけです。この会話時間が約7-8分。これが留守電なら「○○さん、例の件の返答は火曜日になります」で終わるのです。私にとっては時間の無駄です。もちろん、相手先の部長さんと情報交換というプラス面はありますが、それは別途の機会にいくらでもできることで、その場では効率は悪いのです。

先方としては、礼を失さないように電話で応対しているということだと思うのですが、1,000万円台後半の高給と思われる部長さんが電話番しているようでは企業としては困りものでしょう。これは10年ちょっと前の話で、まだ社外とメールのやり取りがさほど頻繁でない時でしたので、このような電話のやり取りがあったのですが、この過剰品質的なスタンスは基本的に変わってないと思います。電話をする方も「なんで留守電なんだ?せっかくかけているのに」みたいなマインドがなるのではないでしょうか?

遅い時間まで残るのは、われわれ働く者のまじめさというか横並び意識も影響しています。上司がいたら帰りづらい。同僚も残っているので自分だけ帰ると浮いてしまう、といった感じです。もちろん、今の管理職の方々には「無駄な長居はするな!自分の仕事が終わったらすぐ帰りなさい」という人も増えていますが、まだまだなんでしょう。

我々は効率性をもっと追い求める努力が必要だと思います。ファックスや電話を未だに使っているところが多いのも考えものです。会合などの「参加・不参加の返信はファックスで」という通知が来るのですが、そのためには紙に印刷して記入し返送しなければなりません。これは紙の無駄。参加管理ソフトでも使ってやれば済む話です。もちろん、メールでOKというところもありますので、メールだとどこからでも返信できるので助かります。

こういう話をすると、効率ばかりではない顔を見ての話や紙でのやり取りも重要だ、という人達がいます。もちろん、会って話しや紙での連絡の良さもあります。しかし、それらは程度の問題で、もう少し我々日本人は効率的なツール活用を心掛けるべきではないかと思うしだいです。

もっと困るのは、なかなかSNSなどの最先端のことは分からなくて…という人がいます。一人がそういうことを言うと、周りの多くが旧式の仕組みに合わせなければならず、とてつもないロスをもたらしている、ということを認識すべきかと思います。

最後に、滅私奉公的な考え方。責任感が強く、仕事を途中で投げ出さないというのは美徳ではあります。しかしこれも程度の問題。自分のプライベートまで犠牲にして働くことは差し控えるべきです。プライベートを充実させてこそ、いい仕事ができるというものです。

もっとも、好きで仕事に没頭している人達、イチローなどのアスリートもそうだと思いますが、好きでやっている人たちは構いません。また、税金を使わせていただいて仕事をする政治の世界に携わる人たちも、その仕事を選んでいる以上は公人として滅私奉公が必要です。ただ、一般的な人たちは、自分のプライベートを大事にして、そのうえで働くときは思いっきり働く、というメリハリで臨みたいものです。そうです、誤解を恐れず敢えていいますと、働く人々はもっと権利を主張するくらいの方が私はいいと思います。

余談ですが「近ごろの若い人たちは権利ばかり主張して義務を果たさない」という言葉をよく聞きます。しかし、私も若いころそう言われ、我々の世代は新人類と呼ばれたくらいです。また「近頃の若者は…」のフレーズはピラミッドの壁画にも書いてあるとのこと。言われ続けて数千年です。こういう、若者に対するレッテル貼りに代表されるような、義務重視の文化的風潮も壊していく必要があります。

いま、自由に働いている会社、社員の観点で労働環境を整えている会社が成功しつつあるいます。昼寝ルームを作って昼寝を促進している会社などが業績を上げています。こういったところが成果を上げてくれば、文化風土も変わってくるのだろうと思います。文化面というのは一朝一夕に変わるものではありませんが、促進させる施策は労働時間の監視強化など行政の側からやれることはまだまだあると考えています。

村上のりあつ【衆議院】大阪府第1区総支部長
大阪生まれ、大阪育ち。 同志社大学卒業後は主に東京で仕事をし、アメリカのイェール大学では経営学を学びました。 コンサルティング会社、グローバル企業であるロイター通信やフォード自動車等では人事の責任者として経験を積み、長年ビジネススクールの講師も務めております。 グローバルと日本の両方の経験を、是非とも大阪の皆さんとともに国政に活かしたい、その思いでいっぱいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です