独裁国のジャーナリストしか「権力追及」の誇りをもってはいけないのか?

菅官房長官に対して執拗に質問を繰りだす東京新聞の望月記者に関する記事内容に対して「吐き気を催す」と毒づいている石平太郎さんのツイートが話題になっています。この望月記者の記事(望月衣塑子 それでも私は権力と戦う)に対し、石平氏は「『それでも私は権力と戦う』という東京新聞望月記者の台詞を鼻で笑った。私は今まで、本物の独裁政権と戦った勇士を数多く見たが、彼女のやっていることは、何のリスクもない民主主義国家で意地悪質問で政府の記者会見を妨害するだけだ。そんなのを『権力と戦う』とは、吐き気を催すほどの自惚れだ!」とツイートされました。

民主主義国家でもジャーナリストは誇りをもつのは当然!

石平氏は何をおっしゃりたいのでしょうか?確かに独裁政権に対抗しているジャーナリストの皆さん方の勇気には、脱帽するしかありません。だからといって、望月記者のような人たちに対して、自分たちはもっと大変な環境だったと言わんばかりに「吐き気を催す」というような汚い表現を使って罵倒する必要があるのでしょうか?

民主主義国家の日本やアメリカでも匿名の嫌がらせは山ほどあるわけで、ジャーナリストの方々はそれなりのリスクを冒して頑張っておられます。当然、仕事に誇りをもって活動されている。石平氏のような独裁政権に対峙する方は凄いけれど、民主主義国家で頑張るジャーナリストに対して何で吐き気を催さなくてはいけないのか?ということです。

「意地悪質問で政府の記者会見を妨害している」というような理由のようですが、加計学園の文書問題で「ないと聞いている」と言い張る官房長官に対して「いや、聞いているではなくて、調べてみたらいいのではないですか?」と言っているだけ。世論調査で70%を超える国民が説明不足と思っているところを確認しているだけの、ごく普通の質問です。加計学園の問題では、結局のところ政府は追いつめられて再調査しました。そもそも意地悪なくらい痛いところを突くのがジャーナリストの仕事ではないでしょうか。これを妨害と言われたら厳しいことは聞けませんし、ジャーナリストの仕事として成り立つのか不思議なくらいです。

日本のジャーナリスト業もまじめにやれば、実はリスクは高い?

このやりとりを取り上げている新聞がまたヒドイ。

東京新聞の望月衣塑子記者を、中国民主化運動に身を投じた石平氏が痛烈批判 「権力と戦うとは…彼女のやってるのは吐き気を催すうぬぼれだ!」(1/2ページ) – 産経ニュース

この記事のなかでの百田尚樹さんの決めつけコメントは「週刊誌のデタラメ記事を参考に質問したり、政権批判をしたいがために北朝鮮の立場になって発言するような薄っぺらい女が『権力と戦う』など、ちゃんちゃらおかしい!!」ときました。週刊誌のデタラメ記事を参考にしたといえば「民進党の辻元清美衆議院議員が学校の敷地に入ったとか、生コン業者を送り込んだとか」それこそネットのデマをニュースにした産経新聞のことかと思いましたが…

それはさておき、なんで望月記者が北朝鮮の立場に立って発言していることになるのでしょうか。前述したように、世論調査で国民の70%以上が説明不足と思っている加計学園の問題などについて突っ込んでいるだけです。ジャーナリストとして普通のことだと思います。それとも官邸に逆らうことであれば、国民の多くがもつ疑問を真面目に質問するだけで「北朝鮮の立場に立つ」と言われてしまうのでしょうか。こうなると民主主義国家でもジャーナリストのリスクは結構高いもののように思えます。立場は違いますが、官邸に逆らおうとしていた前川前文部科学事務次官が出会い系のバーに出入りしていたというプライベートなことを書かれたりすることからみても、民主主義国家の日本でも権力に逆らうリスクは結構高いのかも知れません。

ジャーナリストは国民の問題意識を踏まえて仕事をし、その記事で国民に評価される

石平氏はさらに「私のツイートは1日にして、一万二千以上のリツイートと一万六千以上の『いいね』をいただいた。東京新聞と望月記者の欺瞞と傲慢は多くの人々に嫌われていることの証拠だ。読者は新聞と新聞記者に期待しているのは事実を客観的に伝えることであって、『権力と戦う』という彼らの自己陶酔ではないのだ」と書かれています。

こういうところでの1万以上というのがどの程度多いのかは分かりません。またリツイートはその先で異論が書かれることもあるでしょうから全部賛成ではないでしょう。それでも1日で多くのリツーイトや「いいね」があるのは素晴らしいことだと思いますし、東京新聞や望月記者を嫌っている人が多くいることも推測できます。一方で、望月記者への激励メッセージもよく見かけることも確かです。どちらが多いのでしょうか。

石平氏のコメントの後段にある「読者が新聞と新聞記者に期待することは、事実を客観的に伝えること」というのは賛成するところですし、ジャーナリストの方々に自己陶酔してもらう必要もありません。しかし、前川前文部科学事務次官のプライベートな記事を大新聞社が官邸を擁護するようなタイミングで取り上げている様をみると、望月記者は、独裁国家のジャーナリストほどではないにしろ権力に対峙して頑張っているな!と思う次第です。

ジャーナリストは国民の代弁者かどうかについては「代弁者」の定義にもよりますが、少なくとも、国民の知りたいことを権力者に追及する機会が与えられている立場で仕事をしている方々ですから、国民の問題意識を踏まえて仕事をするというのは必須なことだと思います。そしてその記事内容などがお粗末なものであればそのうち読まれなくなる、という形で審判を受けるのでしょう。いずれにしろ石平氏のように、自分はもっとすごい独裁政権に対抗してきたからといって、民主主義社会のジャーナリズムを鼻で笑い吐き気を催すというのは、まったく意味が分かりません。

村上のりあつ【衆議院】大阪府第1区総支部長
大阪生まれ、大阪育ち。 同志社大学卒業後は主に東京で仕事をし、アメリカのイェール大学では経営学を学びました。 コンサルティング会社、グローバル企業であるロイター通信やフォード自動車等では人事の責任者として経験を積み、長年ビジネススクールの講師も務めております。 グローバルと日本の両方の経験を、是非とも大阪の皆さんとともに国政に活かしたい、その思いでいっぱいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です