グローバリズムを活かすためにも必要である所得の再分配

トランプ氏の排他主義、そしてフランス大統領選挙について前回ブログを書かせてもらいました。イギリスのEU離脱なんかもそうですが、昨今はグローバリズム批判が多く見られます。しかし、グローバリズムが全体のパイを大きくするのは明らか。比較優位という「各国がそれぞれに得意分野で経済活動をして自由貿易で交易すれば、お互いに利益を生む」というリカードが提唱した理論です。日本でいう「餅は餅屋」ということでしょうか。

グローバリズムのメリットを活かすにはしっかりとした再分配が必要

グローバリズムにはパイを大きくするメリットがある反面、自由に任せすぎると、その拡大したパイである富が健全に分配されなくなる問題が起こります。これが前回のブログで書かせていただいた富裕層ファーストになってしまっているという話です。そのため各国では格差が広がり、それがグローバリズムの責任に転嫁され、中間層も含めて保護主義的な反グローバルに傾いていくということが起こっているのでしょう。繰り返しますが、格差の問題はグローバリズムそのものが悪いのではなく、その富の再分配がうまく行われていないのが問題なのです。

今日は、ある意味当たり前のことなのですが、敢えて「再分配の必要性」について書きたいと思います。グローバリズムにおいてパイ全体は拡大するし、できる人には自由にビジネスをしてお金を儲けていただきたい。そして、その利益からはしっかりとした税金を払っていただき分配に回すことが必要です。こういうと多くの人は「税金は払っているし、そんなことは当たり前!」というかも知れません。

もちろん税による再分配を完全に否定する人はほとんどいないでしょう。ただ、今の格差の現状をみると、実際には再分配が十分なレベルで行われていないから人々の不満は増幅し、99%対1%といった、中間層の多くの人々がフラストレーションを抱える社会になり、排外主義的な偏狭なナショナリズムに繋がっているのではないでしょうか。これでは社会の不安定を招き、いわゆる富裕層といわれる人々からしても好ましくない状況です。

努力と結果の比例度は残せる資産の高の差ほど大きくない

所得の再分配に関しては、異議を唱える富裕層の方々はいらっしゃいます。「我々は努力してきたから富裕層になった!」という理由で。極端な例ですが、以前、資産が数千億円というアメリカのある大富豪の方がテレビに出ておられました。その方が言うには「自分たちは努力してきた。だからこれだけの資産を手にするのは当然の報酬で、それに過大な累進的な課税をするのはおかしい」と…

確かに大変な努力をされてきたのだと思います。しかし、資産数千億円だとして、数百万円しか資産を残せなかった人達に比べて10万倍もの努力があったのか?というとそうではないでしょう。成功には、もって生まれた才能、タイミングの良さ、家庭環境、受けさせてもらえた教育、周りとの出会いや人間関係など、運も実力のうちとは言いながら、恵まれていたことも多かったのではないでしょうか?努力と資産が比例というのであれば、相応の是正が必要です。

その大富豪の方も、そもそも税金を全く納めないとおっしゃっているわけではないと思います。しかしながら、テレビなどで、ドヤ顔で「我々は努力をした!努力をしてないものが声高に騒ぐな」と言い放つのを聞くと、わたしとしてはどうかと思ってしまうしだいです。私なんかがいうのは憚られますが、格好良くいえば、努力できる環境にいることができた、ということに感謝する気持ちをもっていただきたいと思います。

将来の不安がもたらす、中間層からの再分配への不満

アメリカの大富豪というちょっと遠い存在の話になりましたが「努力もしていないのに分配を声高に要求するな!」という声は、中間層の方々からも聞かれます。99%対1%の99%の中にも分断があるのです。中間層でさえも将来への不安があります。平成26年内閣府の調査では将来に不安を感じる人が70%近くに上っています。また、中間層の税負担に対して、日本では「高すぎる」と「あまりに高すぎる」が60%以上(ISSP role of government 2006)になっています。これは、将来不安とともに、社会保障原資が自分とは違う層に使われているということに対する不満からくるのだろうと考えられます。中間層でさえ抱える将来への不安と痛税感、これでは再分配がうまく行っているとはいえないでしょう。

所得の再分配が必要というむしろ当たり前のテーマだけで、一つのブログを書かせてもらいました。前述しましたが、税による再分配を完全に否定する人はほとんどいないでしょう。ただ、今の格差の現状を是認して修正しようとしない意見が根強くあることも事実との認識から、このブログを書かせていただきました。では、再分配するにしてもどのような分配を行えばいいのか?これについては、次回以降に書かせていただきたいと思います。

村上のりあつ【衆議院】大阪府第1区総支部長
大阪生まれ、大阪育ち。 同志社大学卒業後は主に東京で仕事をし、アメリカのイェール大学では経営学を学びました。 コンサルティング会社、グローバル企業であるロイター通信やフォード自動車等では人事の責任者として経験を積み、長年ビジネススクールの講師も務めております。 グローバルと日本の両方の経験を、是非とも大阪の皆さんとともに国政に活かしたい、その思いでいっぱいです。

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