フランスの大統領選挙に見る。問題はグローバリズムでなく富裕層ファースト!

先週末、フランスの大統領選挙の決選投票が終わりました。マクロン氏の勝利ということで、ヨーロッパの自国中心主義が少しは弱まってきたのかなと、排外主義が弱まっているのかなと、私なりに少々安堵していました。為替は安定し、株式マーケットはある程度の折り込みがあったため大きなプラスにはならなかったにせよ、その好感が見て取れます。

エリート政治に対する不信感は根強い

しかしながら、当選後デモが繰り広げられているように、マクロン氏の評価がフランスでさほど高いわけではありません。排外主義の度が過ぎるルペン氏よりはましだが、マクロン氏のことは評価せずといった声が根強くあるとのことです。白票と無効票が11%もあったというのは、フランスの人々のある種やるせなさの表れではなのでしょう。アメリカ大統領選でのヒラリークリントン氏への批判の材料にもされた「エリートによる政治」に対する不信感でしょう。ここでいうエリートとは何か?グローバルに動く経済に対応できる能力を持ち、そこから得られる富を享受できる人達だと考えます。

アメリカ大統領選の場合は、そのグローバリズムをうまく批判したトランプ氏が「アメリカファースト」を声高に主張し大統領になりました。グローバリズムはメキシコなどの外国を利しているのでそれを弱めようという訳です。トランプ氏の就任のタイミングでも書きましたが、私はこのグローバリズムを一人悪者にする批判はお門違いだと考えています。

グローバリズムは悪者ではない

グローバルでの自由な貿易があってこそ、我々は安くいいサービスや製品を提供してもらえます。日本でいうと例えば、牛丼を300円そこそこで食べられるのは、消費者として自由な貿易の恩恵を受けているからです。アメリカの人々も安価で乗用車を購入できるのは、メキシコなどでの製造があってこそ。トランプ氏はアメリカに雇用を取り戻すといっていますが、アメリカの労働者は製造業だけではありません。車のディーラーで働く人々は車輌価格が上がれば販売数が減って職も細ってしまいます。つまり労働者としても、グローバリズムの恩恵を受けている部分もあるのです。

こういった議論をすると必ず言われるのが「行き過ぎたグローバリズムはいけない」といった切り返しです。ごもっとも。行き過ぎが良くないのは当たり前で「過ぎたるは及ばざるがごとし」といった格言まで引っ張り出すまでもありません。では、ここでいう行き過ぎとは何なのか?これは、グローバリズムをそのまま放置してしまうことです。その結果、グローバリズムにうまく乗っているエリートにだけ相当なメリットがいき、それに乗れない人たちを置き去りになっているのです。

問題なのは富裕層ファースト

グローバリズムの中で中心的に活動するには、語学や金融・ビジネススキルなどある程度の専門的な教育を受ける必要があります。いわゆるエリートになるための教育です。問題は、その人たちだけでグローバリズムのうまみを享受していたことではないでしょうか。グローバリズムを支えているのは普通の人々です。上質の家畜を育てている農家もそうでしょうし、良い工業製品を作るために工場で働いている労働者の方々もそうでしょう。貿易時の為替予約などの金融技術を駆使している金融業界の人達だけではありません。にもかかわらず、グローバリズムの恩恵のほとんどは普通に働く人たちに行かないで、一部のエリート層だけが恩恵にあずかる。つまり富裕層ファースト。これが問題なのです。これでは普通の人達が怒るのは当たり前です。

トランプ氏が「アメリカファースト」と声高に叫んでいましたが、歴代のアメリカ大統領がメキシコファーストだった訳がありません。フランスにしても、大統領はこれまでもフランスファーストだった。しかし、そこで得た富を一部の富裕層に偏らせ過ぎた「富裕層ファースト」な分配政策が問題だったということなのです。

偏狭なナショナリズムを煽るグローバリズム批判こそ大問題

富裕層ファーストが問題なのにもかかわらず、外国に敵を作ってナショナリズムを高めて人気を得るという手法で、トランプ氏はメキシコに壁を造ると言い、ルペン氏はEUを敵視しているのではないでしょうか?こういった排外スタンスは、異文化への寛容性を失わせる本当に危険極まりないものです。これまでの政治の愚策を外国の責任にしたてて排他的なナショナリズムを煽る。こういう手法はしっかりとした眼をもって監視していかなければなりません。

村上のりあつ【衆議院】大阪府第1区総支部長
大阪生まれ、大阪育ち。 同志社大学卒業後は主に東京で仕事をし、アメリカのイェール大学では経営学を学びました。 コンサルティング会社、グローバル企業であるロイター通信やフォード自動車等では人事の責任者として経験を積み、長年ビジネススクールの講師も務めております。 グローバルと日本の両方の経験を、是非とも大阪の皆さんとともに国政に活かしたい、その思いでいっぱいです。

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