1億円を超えると税負担率が減る!?

税金というのは、所得の再配分という意味でも非常に重要な機能です。時代劇なんかを観ると、税金である年貢は、為政者が自分たちの豊かさのために民からまきあげるという感じです。現代社会でも税の使い方には疑義を唱える方々はおられますが、昔に比べれば、再生産を促し、社会全体の効用を高めるために用いられているといえるでしょう。

この税金の率ですが、課税所得が330万円をこえた場合でも30%(所得税と地方税)の税負担率です。これに社会保険関係の負担が加わると、330万を超える方々の税の負担感は大きいと思います。高額所得の方々でみると、課税所得が1,800万円を超えると半分が税金(所得税と地方税)になります。こちらの方々も、重税感はあるでしょう。このクラスになると企業の役員の方々などで、収入は多いものの多忙を極め、またリスクの高いお仕事でもあるでしょうし、負担感が大きいと思われるのはうなずけるところです。

ところが、次の税負担率の変化グラフ(所得税のみ)を見ていただくと分かるのですが、1億円を超えると税負担率が低減していきます。どうしてこんなことが起こるのでしょうか?

これは1億を越えるくらいの高収入の方々の場合、収入源が株式などの譲渡所得の比率が大きいからです。株式の場合、税率は分離課税で地方税を入れて20%ほどと低いからです。

高額の所得を得られている方、それが株式ということは、それまでに稼いでこられた分を投資しておられるのだと思います。株式投資は決して非難されることではありません。そのお金を原資にして企業は経済活動を行い、更に経済が高まっていくわけですから。

ただ、非常に高収入な方々の税負担率が低減していくというのはいかがなものでしょうか?高額所得の方をやり玉にあげようというのではありません。再配分のための税負担をそれなりに行える仕組みを作ることは、これは政治の責任です。高額所得者の方々というよりも、それを放置している政治の問題でしょう。

アベノミクスの一環で、日銀や、我々の年金原資を使ったGPIFは株式に投資しています。まさしく官製相場(官製相場に関しては、次のブログをご覧ください

で意図的に株価高を演出しているのです。これで株式などの譲渡所得課税が低いという現状を放置しているのは、優遇している層が超富裕層に偏っているとしかいえないでしょう。税制の修正が必要と考えます。

話はそれますが、資産が数千億円というアメリカのある大富豪の方がテレビに出ておられました。その方が言うに「自分たちは努力してきた。だからこれだけの資産を手にするのは当たり前で、それに累進的に課税するのはおかしい」と…確かに凄い努力をされてきたのだと思います。しかし、資産数千億円ということは数百万円しか資産のない人に比べて10万倍もの努力があったのか?というとそうでないでしょう。

スポーツ界の話でいえば、メジャーリーグのイチロー選手の努力は凄まじいものがあるでしょうが、プロとして目が出ず去っていった選手も相当な努力をされているはずです。成功には、もって生まれた才能、ちょっとしたタイミングの良さ、家庭環境、受けた教育、周りの出会いや人間関係など、運も実力のうちとは言いながら、恵まれていたことも多かったのではないでしょうか?イチロー選手もデビュー当時は監督とそりが合わず、振り子打法はダメだと使ってもらえなかったのが、仰木監督との出会いで花開いたわけです。

スポーツの話になりましたが、もちろん、大富豪の方々は凄い努力をされたし、そもそも税金を納めないとおっしゃっているわけではないでしょう。しかしながら、テレビなどで、ドヤ顔で「努力をしたんだ!」と言い放つのを聞くと、わたしとしてはどうかと思ってしまうしだいです。私なんかがいうのは憚られますが、格好良くいえば、努力できる環境にいることができた、ということに感謝する気持ちをもっていただきたいと思います。

努力自慢の話はさておき、やはり、税の負担の公平性を維持するためにも、譲渡所得の低率な分離課税は見直す必要があると考えます。一般の収入のように扱い、課税するというのが非常にシンプルでフェアなものだと思います。

村上のりあつ【衆議院】大阪府第1区総支部長
大阪生まれ、大阪育ち。 同志社大学卒業後は主に東京で仕事をし、アメリカのイェール大学では経営学を学びました。 コンサルティング会社、グローバル企業であるロイター通信やフォード自動車等では人事の責任者として経験を積み、長年ビジネススクールの講師も務めております。 グローバルと日本の両方の経験を、是非とも大阪の皆さんとともに国政に活かしたい、その思いでいっぱいです。

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