やりがい搾取の是正には政治の責任は大きい!

先日、介護のお仕事、そして保育のお仕事をされておられる方々と話す機会がありましたら、収入についての不満をおっしゃっておられました。最近はやや改善したものの世代相場よりも月収で10万円近く水準が低い。精神的にも肉体的にも厳しいが、やりがいはある。将来の不安を考えると、転職を考えたこともあるが、周りへの迷惑なども考え思いとどまられたとのこと。

介護の方は自分の親の面倒をあまり見れなかったこともあり、その恩を返す思いもあるのでこの仕事をしていると。保育士の方は、ずばり子どもが好きだとおっしゃっておられました。まさしく、やりがいと責任感でやっておられる仕事です。

 

国レベルで行われているやりがい搾取

介護や保育といった仕事は、助成金という形で行政が間接的に処遇をコントロールしている仕事です。働いておられる皆さんは、やりがいとその思いを支える責任感の強さで自らを鼓舞されておられます。やりがい搾取という言葉が最近使われますが、これでは国家によるやりがい搾取、責任感搾取状態と言わざるを得ない状態です。

 

責任感を搾取する社会規範

辞めると周りに迷惑をかけてしまう。休みをとるにしても自分でその代役を探さなければならない、という職場の話を聞きました。喫茶店チェーンでアルバイトしていた大学生が「3週間ほど先に、一日の休みが欲しい」と言ったら、店長が怒って「シフトが決まっているのに何を無責任な。休むなら自分で代わりを見つけなさい!」と言われたとか。よく聞きそうな話です。

この話を外国人の友達に言ったら「シフト管理は管理職の仕事じゃないの?アルバイトなのに、なんでそんなこと言われるのか?」と怪訝な顔をしていました。日本の企業社会は「社員も社長のつもりで働くように」と言われてきました。もちろん30年前のバブル期程ではないにしろ、責任感を持って仕事をするのは当前といった考えはまだ根強いです。社長の観点で仕事をするのは悪いことではないのですが、報酬や休暇取得などで、その責任感を搾取するのはいけないということです。その喫茶店チェーンでいえば、店長の方もある意味、責任感搾取されているのでしょう。働く人がある程度フレキブルに休暇を取りやすいように、店の運営に人員配置などで余裕を持たせるのは会社の責任です。にもかかわらず、社員にその責任感を押し付ける構造があることが問題です。

カスタマー・ハラスメントなんていう言葉もあります。「お客様は神様です」をギャグ半分で言っているのは構いませんが、顧客の方もサービスに対する過度な期待というのは問題です。これはある意味日本のおもてなし文化の良き面でもあるのですが、そのしわ寄せが働く人に行っている現状はやはり改善していくべきところだと思います。

 

働く人たちが権利意識高められる風土を作り易いような、行政の取り組みが必要

働く人たちが権利意識を高めてもっと権利主張する社会風土になっていくことは、私は推奨されるべきだと考えます。契約した時間と仕事は責任をもってしっかりする。一方で、会社と自分の役割を鑑みて、無茶な要求にはNOというのは当然です。責任をもって仕事をする優秀な人が、やりがいや責任感を搾取する会社を去っていけば、会社は困り改善していくでしょう。

行政も、助成金などで管理している仕事があれば、そこに対してはしっかりとした予算を付ける。介護や保育の仕事のように、世代相場より大幅に安いというのは大きな問題です。これらの改善はもちろんのこと、最低賃金アップや働く人たちの環境改善に法律の面から後押しすることは政治の仕事です。何年か前に成立した高度プロフェッショナルなんていうのは、やりがい搾取が横行する日本では働く人を苦しめる法律、逆行していると言わざるをえません。

働く人々の権利意識のアップ、そして政治がそれを支援する仕組みづくりを行う。この双方が両輪として動いてこそ、社会規範は変化し、やりがい搾取や責任感搾取などということばは死語になっていくのだと考えます。

村上のりあつ【衆議院】大阪府第1区総支部長
大阪生まれ、大阪育ち。 同志社大学卒業後は主に東京で仕事をし、アメリカのイェール大学では経営学を学びました。 コンサルティング会社、グローバル企業であるロイター通信やフォード自動車等では人事の責任者として経験を積み、長年ビジネススクールの講師も務めております。 グローバルと日本の両方の経験を、是非とも大阪の皆さんとともに国政に活かしたい、その思いでいっぱいです。

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