ウソと争点隠しのだんまり選挙の横行

イギリスのEUからの離脱が国民投票で決まった直後に、英国独立党のナイジェル・ファラージ党首が「EU離脱によって浮く供出金の額で誤りを認めた」と報道がありました。はっきり言って選挙後に「嘘」だと告白した訳です。離脱派のロンドン前市長のボリスジョンソン氏らも主張していた毎週3億5000万ポンドの拠出金を医療サービスに、といっていたのは実は1億数千万ポンドだったとか。

また、移民の抑制も限定的でそんなに激減するわけではない、といい始める始末。イギリスはもともと、EU域内での移動の自由を保障しているシェンゲン協定には入っていなかったので、野放図に移民が入ってきたわけではなかった。さらに、今後EUと通商交渉をするにあたり、移民受入NOだと話にならないので譲歩も必要なため激減は無理。これらウソの公約に恐ろしくなったのか、ファラージ氏もボリス氏も党首選には出ませんでした。選挙前に嘘をつく。国民をバカにした、とんでもない話です。

アメリカでも同じことが起こっています。メキシコに壁を造るといっても、陸路で入る人は何人いて壁だけで何人の不法移民を防げるのか?海や空はどうするのか?壁にはしごをかけてくる人を、昔の東ドイツのように銃で撃つくらいまでやって効果を出すのか?既に入国している1,100万人の不法滞在移民はどう扱うのか?そもそも1,100万人のうち半分はメキシコ以外の国から来ている不法移民の人達だが、どう考えるのか?

2兆円を超えるという費用をかけて壁を建設し、毎年の管理コストに800億円もかける費用対効果はいったいののくらいあるのか?その実現性と効果にはなはだ疑問がある訳です。つまり、税金を意味のないところに使うということは、将来の財政圧迫、ひいては国民の生活にマイナスに響いてくる訳です。

トヨタやフォードを名指しした自由貿易の否定も同じく。製造業の雇用だけがアメリカの雇用ではありません。自動車でいえば、ディーラーの仕事もあります。アメリカでの製造にこだわるあまり、自動車の価格が高騰してしまうと売れなくなり、雇用に悪影響を及ぼします。そもそもメキシコで製造しアメリカに輸出されている自動車部品の40%はアメリカ国内での生産だとか。メキシコからの輸入に高率の関税をかけたら、アメリカ国内の部品産業が疲弊してしまいます。

つまり、壁を造ることが国民の生活が良くなる、保護貿易がアメリカの利益になる、と嘘をついているようなものです。

日本もしかりです。昨年の参議院選挙で安倍首相は、争点は経済政策であると強調し、選挙期間中に憲法改訂に関しては全くと言っていいほど触れませんでした。党首討論会などで追及されると「憲法の中身に関しては、行政の長がとやかく言うことではない」とおっしゃり「自民党の党是はそもそも改憲だから、言う必要がない」ということでした。

ところが選挙が終わったとたんに「いよいよ憲法審査会に議論の場が移り、どの条文をかえるのかの議論が集約される」といったようなことを発言しています。改憲の中身をとやかく言うのは行政の仕事ではない、というのは確かですが「内閣総理大臣は、立法府の長」とまで間違った見解を述べるほど、安倍首相は権力意識の強い方なのですから、選挙期間中に持論を言うことが誠意だと思いますが、いかがでしょうか?

英米日ともにことごとさように、争点を隠したりごまかしたりしながら選挙が行われているのが現状です。有権者は本当に、鵜吞みにしない鋭い批判的な眼を養わなければならないといえます。

村上のりあつ【衆議院】大阪府第1区総支部長
大阪生まれ、大阪育ち。 同志社大学卒業後は主に東京で仕事をし、アメリカのイェール大学では経営学を学びました。 コンサルティング会社、グローバル企業であるロイター通信やフォード自動車等では人事の責任者として経験を積み、長年ビジネススクールの講師も務めております。 グローバルと日本の両方の経験を、是非とも大阪の皆さんとともに国政に活かしたい、その思いでいっぱいです。

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