イギリス人が言ってたAmerica is unique!今さら自動車業界でのトランプ大統領の「日本特殊論」はあり得ない

以前、フォード自動車の日本法人に勤務していました。当時、日本での営業の最前線にいらした方々からすれば、人事部門にいた私なんかがコメントするのはおかしいと言われるかも知れませんが、この報道には笑ってしまうので、書かせてもらいました。

米車販売を難しく…トランプ氏が日本を批判 日本テレビ系(NNN)1/24(火)2:13配信

アメリカのトランプ大統領は23日、企業の幹部らとの会合で、「日本はアメリカの車の販売を難しくさせている」と述べ、日本の通商政策は公平ではないと批判した。
米国・トランプ大統領「我々が日本で車を売る場合は、日本は販売を難しくさせているが、日本はアメリカで車を販売している」
トランプ大統領はこのように述べ、日本の通商政策について「公平ではない」と批判した。
トランプ大統領が日本でのアメリカ車の販売について不満を表明したのは初めて。今後、日米間の貿易交渉が始まった場合、アメリカ車の販売を増やすよう日本側に要求してくる可能性がある。
一方、トランプ大統領は経済対策として、法人税の減税と規制緩和を進める方針を示し、規制については「75パーセント以上撤廃できる」と強調した。

http://www.news24.jp/articles/2017/01/24/10352275.html

さすがのトランプ大統領も、日本がアメリカの自動車に関税をかけていないことは知っていると思います。いや知らないかも…

25年ほど前「非関税障壁」という言葉がよく使われました。日本にある、複雑に絡み合った流通卸の仕組みや、厳しい検査規制が、関税以外にアメリカ車の日本への輸出を阻んでいる、というものです。

1990年過ぎ、日本製の自動車がアメリカでやり玉に挙げられ、デトロイトなどでは日本車が叩き潰されたりしていました。私は当時デトロイト郊外のミシガン州に住んでいたのですが、TVでプロレスを観ると「横綱」という名前の曙横綱に似た悪者が星条旗のトランクスを履いた正義の味方にやっつけられるような放映がありました。それはさておき、その際、日本を攻撃するのによく使われた言葉が「Japan is unique!」です。ここでの「Unique」とは、閉鎖的で特殊なというマイナスの意味です。いわゆる日本特殊論、というやつです。

しかし、その頃でもヨーロッパの自動車会社は日本の市場で、ややニッチなマーケットとはいえそれなりの台数を販売していました。その後、アメリカの自動車会社も肝いりで日本でのオペレーションを拡大しようとして、流通網を買い取ったりしたのですが、なかなか販売台数を伸ばせず、日本での事業は縮小していったのです。これはアメリカ車の製品の問題だと思っています。

本質を突いた笑い話があります。私がフォードジャパンに勤務していた頃、テストドライブといって外国の開発エンジニアが日本にやってきて、実際に運転するプロジェクトがありました。日本の道路を走る感覚を肌で知り開発に役立てる、という目的です。私もそれにお付き合いし、イギリス人とドイツ人のエンジニアが交代で、世田谷やら神奈川県まで運転するのに同行したことがあります。

その時に聞いた言葉が今でも忘れません。イギリス人のエンジニア曰く「今度のトーラス(アメリカでは売れ筋の大衆車)のモデルチェンジは何なんだいったい?あんな形で、あんな大きいのがヨーロッパで売れるはずがない。America is unique!」と言ったのです。

思わず吹き出しそうになりました。日本がアメリカに非難されていた表現「Japan is unique!」を、イギリスのエンジニアがアメリカを非難して「America is unique!」と言ったのですから。私はそのイギリス人のエンジニアに、日本がアメリカに「Japan is unique!」と批判されているのを知っているか?と聞いたら、知らないというので、この偶然性に二度笑ったのを覚えています。

アメリカのビッグスリーと言われる三大自動車会社があるミシガン州の道路事情は全く違います。左折(日本でいえば右折)するときには、わざわざUターンして戻ってきて右折(日本でいえば左折)するといった感じで曲がるのです、その方が渋滞は少なくなります。これは、ほんとうに広い国だから可能なことです。というか、このターンはミシガンターンと呼ばれていて、アメリカでもそうそうありません。

要するに、自分中心で他を知らずに物を造っていると売れるはずがない、という当たり前の話であったわけです。そもそもなぜ日米の自動車輸出に差があるか?を吟味すれば、その製品力であることは明らかなのです。逆にいえば、肉の輸出量はアメリカの方が多いのですから。トランプ大統領はビジネスで成功された方ですのに、そんな昔の日本特殊論を持ち出されても困るというものです。

村上のりあつ【衆議院】大阪府第1区総支部長
大阪生まれ、大阪育ち。 同志社大学卒業後は主に東京で仕事をし、アメリカのイェール大学では経営学を学びました。 コンサルティング会社、グローバル企業であるロイター通信やフォード自動車等では人事の責任者として経験を積み、長年ビジネススクールの講師も務めております。 グローバルと日本の両方の経験を、是非とも大阪の皆さんとともに国政に活かしたい、その思いでいっぱいです。

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