万博推進は公共事業で儲けたいだけなのでは?

1964年の東京オリンピックの頃、日本は新幹線を開通させました。まだ貧しかった日本は、その財源は世界銀行から借りたといいます。当時、東京と大阪を最高時速210キロで走り、3時間半ほどで結ぶ新幹線。「夢の超特急」と呼ばれるほどでした。東名および名神高速道路などとともに、東京オリンピックに併せて行われた超大型プロジェクトだったといえるでしょう。

公共事業を行うとそこで雇用が生まれ、その雇用から消費が生まれ、経済が成長していきます。それだけではありません。50年前の日本のように、東京と大阪の間に新幹線ができたら、それを使って人が移動し経済活動を行う。高速道路が整備されたら、物流が促進され経済が活性化する、という効果もあります。これは乗数効果と呼ばれます。つまり一つの投資がその雇用だけではなく、できた公共事業のインフラを用いてますます経済活動が高まり、文字通り乗数的に経済が高まるということです。

万博もしかりだと思います。1970年の頃の万博は国民的行事で、月の石を見るために夏の暑い中に2時間近くもアメリカ館で並んだのを覚えています。当時まだ、人の移動が少なかった時代でも170万人もの外国の人達が訪れたとのことです。日本を知ってもらう観光効果は大きかったでしょう。2013年の海外からの観光客数がようやく1,000万人(2011年は620万人ほど)を越えたというのを聞いても驚きです。

ところが今はどうでしょうか?インフラの整備は進み、この乗数効果が弱い工事しか残っていないのです。公共事業に支出すればそれは雇用を生むとはいいますが、建築後にさほど使わないのであれば乗数効果が小さいわけですから、はっきりいって投資効率が悪いわけです。オリンピック施設のように、作ったのはいいが、その維持管理費で大赤字というのでは本末転倒です。そんな新規施設よりも水道や既存高速道路などのインフラの老朽化の修繕に投資すべきです。

万博も同じくです。大阪に万博を誘致しようとしている人は「長寿と健康」をテーマにしていますが、今のようなインターネットの時代に人々は万博に足を運ぶでしょうか?外国からのお客様も、万博よりも歴史のある寺社、美味しい料理を食べたり、道頓堀のようなユニークな街並みを見に来たりする方が楽しいのではないでしょうか?実際、日本人にとっては日常な渋谷のスクランブル交差点の人混みは世界では珍しく、外国人旅行者が写真を撮る人気スポットになっているようです。万博ではAIを前面に出すという方もいますが、AIならまさしくサイバーの世界で楽しめるはずです。今世紀、ドイツでおこなわれた万博も失敗と言われています。結局は、万博に関連した公共事業で儲けたい人々がいろんな理由をつけて万博を誘致したいという魂胆が透けて見えるわけです。

前述した、インフラの老朽化に伴う修繕などの必要な公共工事は行わなければなりません。しかし、今の日本にとって一番乗数効果の高い投資とは何なのか?本当に投資しなければならないのは、乗数効果が低くなってしまった公共事業ではなく、乗数効果の高い我々の脳みそ、教育分野だと考えます。まさしく人への投資です。教育分野に投資すれば、そこで働く人たちの雇用は高まります。そして、教育を受けた人たちが仕事をし、税金を払い、経済的にも社会的にも高まっていくわけです。万博のような公共事業に依存する経済政策は見直し、人への投資にシフトしていくことが必要なのです。

村上のりあつ【衆議院】大阪府第1区総支部長
大阪生まれ、大阪育ち。 同志社大学卒業後は主に東京で仕事をし、アメリカのイェール大学では経営学を学びました。 コンサルティング会社、グローバル企業であるロイター通信やフォード自動車等では人事の責任者として経験を積み、長年ビジネススクールの講師も務めております。 グローバルと日本の両方の経験を、是非とも大阪の皆さんとともに国政に活かしたい、その思いでいっぱいです。

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